アメリカ、イギリス、日本の映画会社が共同出資してできた「BROTHER」は、北野武監督作品9作目の第二の「ソナチネ」と銘打って世に出された、ある種アメリカ人向きにリズミカルなテイストを施された異色作となりました。撮影は東京とロサンジェルス郊外で行われ、スタッフは日本人とハリウッドで活躍している映像技術チームで構成され、北野武はそのシステムの中にあっても、圧倒的な即興演出を展開させ、アメリカ人スタッフに感銘を与えました。

しかしこの「BROTHER」は、北野武が日本的な味を出すにも、撮影機材や、スケジュール構成の流れから、全てがハリウッド仕込みのパーツができあがるので、成功も失敗も含めて、意外性という付属的な要素は全く加わることなく、撮影は順調に進みはしましたが、アクション映画ではなく暴力映画として、北野自身は、このプロジェクトに対する重荷というものを感じることなく、日本のカラーというものをある程度、反映させることに成功しました。

2001年7月から11月までの間にアメリカでは56の劇場で公開され、45万ドルの収益をあげましたが、アメリカ以外の国での収益の合計は1,400万ドルとなっており、他の国のマーケットに比べると、萎縮傾向にあったことが分かります。

しかしそれは13年前の話であって、「監督ばんざい」やアウトレイジシリーズを経た現在は、かなり映像表現にもボリュームが出てきましたし、アメリカ人のテンションに符合しうるパワーが近いうちに炸裂するのではないかという期待が、キタニストと呼ばれるファンの間には広がっています。

世界のエンターテイメントの中心であるニューヨークは、1998年に「HANA-BI」を大々的に受け入れ、国際映画賞を授与しています。また「座頭市」もアメリカ人の感覚に合い、評価は高まっています。マニア映画としての質を高めた北野作品の数々は、アートとして受け入れられてきましたが、ここにエンターテイメント性が加われば、より一層の評価は期待されますし、今後のアメリカ戦略として、いわゆるぶっ飛んだ映画というものの本質と北野武のディテールが合えば、より効果的な映像が出来上がる事は間違いありません。

黒澤明が1960年代に発表した「用心棒」、」「椿三十郎」、「天国と地獄」の3部作は、アメリカ映画的であると評され、北アメリカでの地位を不動のものにしましたが、北野武が本格的なアクション映画に挑む日もそう遠くはないと確信している評論家も多数存在することから、今後の展開を注意深く見守る必要があります。

四季折々の美しさを繁栄させた「HANA-BI」や「DOLLS」に対して、完全なる娯楽体制の強化として打ち出した「BROTHER」や「座頭市」では、北野武本人のポテンシャルが高められて、より具現化したビジョンが示されましたが、相も変わらず海外での人気は高く、「BROTHER」での暴力表現は衝撃的なものである反面、繊細な香りを放つ作品として、ヴェネチア国際映画祭でもオープニング作品として注目を浴びました。